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  • 自己破産をすれば奨学金の返済も免除されますか

     

    Aさんは貸与型の奨学金を高校、大学と通じて借りていましたが、大学卒業後も非正規雇用が続き収入が安定せず、奨学金600万円を返す目処が立たなくなり、自己破産を検討しています。

    奨学金を借りた際にAさんの父親が連帯保証人になっています。

    自己破産をすれば奨学金の返済も免除されるのでしょうか。

    連帯保証人であるAさんの父親にはどのような影響が出るのでしょうか。

     

    奨学金も免責を受ければ返済義務がなくなります。

    奨学金は自己破産の免責の対象となっています。

    そのため、裁判所に自己破産を申立て、支払不能と認められて免責の許可決定が確定すれば、Aさん本人の奨学金の返済義務はなくなります。

     

    本人の返済義務はなくなりますが、連帯保証人や保証人は返済義務が残ります。

    貸与型の奨学金は返済義務があるため、申込時に「人的保証」か「機関保証」のどちらかを選ぶ必要があります。

    「人的保証」は、原則として、連帯保証人は父母またはこれに代わる人、保証人は4親等以内の親族で本人及び連帯保証人と別生計の人を立てることとされています。

    「機関保証」は、一定の保証料を支払い、連帯保証人や保証人の代わりに保証機関に保証をしてもらいます。

     

    奨学金の返済が滞った場合、「人的保証」では連帯保証人や保証人が本人の代わりに奨学金を返済することになっているため、Aさんが自己破産の申立てをして免責許可決定を受けても、連帯保証人である父親に返済義務が残ります。

     

    この場合、連帯保証人である父親に対して一括返済を求める通知が届くことになりますが、相手方との交渉により分割払いが認められる可能性もあります。

     

    奨学金の返還が難しくなった場合には「減額返還制度」や「返還期限猶予」などの制度もあります。詳しくはこちら

     

    司法書士 永野昌秀

  • 自己破産をするとイデコ(個人型確定拠出年金)はどうなりますか

     

    Aさんは自営業者で自宅兼店舗を改装した際に銀行から2000万円の融資を受けました。その後運転資金などの不足を補おうとして、貸金業者からの借金も500万円ほどになり、支払いのめども立たないため、自己破産を検討しています。

    Aさんは自営業ですので、国民年金に加入していますが、老後資金の足しにしようと、10年前から個人型の確定拠出年金(以下「イデコ」といいます。)を始めました。

    Aさんが自己破産をした場合には、イデコはどうなるのでしょうか。

     

    Aさんはイデコを60歳以降に受取ることができます。

    イデコとは、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度の1つです。国民年金などの公的年金と異なり、加入は任意となります。

    60歳以降に、イデコの規約の定めにより、一時金または年金などの形でお金を受け取ることができます。

     

    Aさんの自己破産手続きは管財事件となります。

    Aさんは自営業者であり、自宅兼店舗という財産があるため、自己破産開始決定と同時に破産管財人が選任され、Aさんの自宅兼店舗などの価値のある財産は破産管財人により管理処分されることになります。

     

    破産手続開始決定時の破産者の財産のうち、破産者は一定の財産を自由に処分することができ、これを自由財産といいます。破産者の経済生活の継続と経済的再生のために認められています。

    自由財産の中でも、99万円以下の現金、差押えが禁止されている動産(家財道具など)や債権(給料など)は当然に自由財産となり(破産法第34条第3項)、破産管財人の管理処分の対象外になります。

     

    イデコの財産は税金の滞納処分以外では差し押さえができない差押禁止財産とされており(確定拠出年金法第32条)、当然に自由財産となるため、自己破産しても守られます。

     

    司法書士 永野昌秀

  • 自己破産をすると滞納したNHK受信料はどうなりますか

     

    Aさんは借金が500万円ほどあり、自己破産の申立ての準備をしています。

    借金の中には、貸金業者からの借金の他に滞納したNHKの受信料も含まれています。

    Aさんが自己破産をした場合、滞納したNHK受信料はどうなるのでしょうか。

     

    免責許可が確定すれば滞納したNHK受信料の支払い義務はなくなります。

    自己破産で免責許可が確定すれば、貸金業者などからの借金の支払い義務はなくなります。

    一方で、税金や罰金、一部の公共料金など一部免責されないものもあります。(非免責債権といいます。)

    滞納しているNHK受信料はNHKとの受信契約に基づいて発生するため、税金や一部の公共料金とは異なり、貸金業者からの借金と同じように、自己破産手続きで免責許可を求めることができます。

    Aさんの免責許可が確定すれば、滞納した受信料の支払い義務はなくなります。

     

    滞納したNHK受信料の支払いは免責不許可事由にあたります。

    自己破産では全ての債権者を平等に扱うことが求められます。

    Aさんが支払い不能になった後または破産手続申立後も、NHKから督促状が送付されてきたり、委託を受けた集金人が訪問をしてきたりすることがあります。

    支払不能になった後または破産手続申立後にNHK受信料の滞納分の支払いをすることは、不公平な返済をすることにあたり免責不許可事由に該当します。破産手続きに影響が出ますので、自己破産手続き中に滞納分の受信料の支払いは行わないでください。

     

    滞納しているNHK受信料がある場合は相談時に知らせて下さい。

    自己破産を申立てる場合にはすべての債権者を裁判所に報告する必要があります。

    Aさんが知りながら債権者名簿に記載していない債権者の借金は、免責許可が確定しても免責されず借金の支払い義務が残ってしまうので注意が必要です。

    借金の中にNHKの受信料の滞納がある場合には面談の際にお知らせください。

     

    司法書士 永野昌秀

     

  • 【破産/Q15】自己破産をすると仕事を続けられなくなりますか?

    question
     
    自己破産をすると仕事を続けられなくなりますか?
     
    answer
     
     
    勤務先は従業員を自己破産を理由に解雇することはできません。
     
    裁判所が勤務先に破産手続開始がされたことを通知することもありません。
     
    破産手続開始決定がされると、裁判所は決定がされたことを債権者に
    通知する必要があるので、勤務先からの借り入れがある場合には、
    勤務先にも通知が行くことになりますが、勤務先からお金を借りて
    いなければ勤務先に知られることはありません。
     
    ただし、自己破産をした場合に特定の資格や職業に制限がかかり
    仕事の継続が困難となる場合があります。
     
    保険外交員、証券外務員、質屋、古物商など他人の財産を扱う
    職業の方は資格制限の対象です。
    その他にも、旅行業務取扱管理者、警備員などが資格制限の対象になります。
     
    破産者が会社の役員である場合、会社との委任契約が終了するため、
    役員の地位を失うことになります。(破産者を再度会社の役員に選任することは可能です。)
     
    弁護士、公認会計士、司法書士、税理士などの資格所有者は資格停止になり
    一定期間業務をすることができなくなります。
      
    資格制限の期間は破産手続きが完了し免責決定が確定するまでなので、
    ずっと資格制限が継続するわけではありません。
     
     
    自己破産申し立て後、免責許可決定が確定するまで、財産がない場合には3カ月から半年程度、
    財産があり破産管財人が選任されている場合には、半年から1年程度が目安になります。

  • 【破産/Q14】自己破産をすると保証人にどのような影響が出ますか?

    question
     
    自己破産をすると保証人にどのような影響が出ますか?
     
    answer
     
    原則、自己破産による影響を受けるのは自己破産をした本人のみです。
    ただし、借金をした際に保証人がいる場合は、保証人に影響が出てきます。
     
    債権者は、債務者が万が一返済できなくなった場合に備えて保証人
    を確保しています。債務(借金)に保証人が付いている場合、
    債権者(金融機関など)は保証人に対して返済を求めることになります。
     
    あなたが自己破産の申立てをして、債務返済の責任を免除されても、
    保証人はあなたの代わりに借金を返済する義務があります。
     
    しかも、債権者との契約上、支払いが滞った場合には分割払いが認められなくなる
    ことが多いため、保証人へは一括で請求される可能性が高いです。
    (最終的には分割払いに応じる債権者も多いです)
     
     
    もし保証人に支払い能力がなかったり、支払いが困難な状況にある場合、
    保証人についても自己破産等の債務整理を検討する必要があります。
     

  • 【破産/Q13】自己破産をすると自分以外の家族に影響が及びますか?

    question
     
     
    自己破産をすると自分以外の家族に影響が及びますか?
     
     
    answer
     
    原則として自分以外の家族に影響が及ぶことはありません。
     
    自己破産することによって発生するメリットやデメリットは、
    破産者だけが受けることになります。
    破産者と家族であるということだけでは、その人たちに何らの影響はありません。
     
    保証人にならない限り家族に支払義務はありません。
     
    また、家族の進学、就職、結婚等にも影響はありません。
     
     
    【破産/Q14】自己破産をすると保証人にどのような影響が出ますか?に続く。

  • 【破産/Q12】自己破産をすると住む場所はどうなりますか?

    question
     
     
    自己破産をすると住む場所はどうなりますか?
     
     
    answer
     
    ①アパートや借家などの賃貸借物件に暮らしている場合

     
     
    自己破産をしても自己破産をしたことのみを原因として
    契約を解除されて退去を求められることはありません。
     
     

    ただし、家賃を滞納していた場合、契約が解除され
    退去しなくてはならない場合があります。
    家賃滞納がない場合には貸主は債権者ではないため、
    裁判所から貸主に通知が行くこともありませんので、
    自己破産したことを貸主に知られることはありません。
     
    ②自己所有の不動産に暮らしている場合
     
    住宅ローンを返済中の場合、多くの場合、土地建物を担保にお金を借りています。
    ローンの支払が滞った場合には、ローン会社は対象となる土地建物を売却して、
    残存した債権を回収することができるのです。
     
     
    住宅ローンがない場合でも不動産は高額な財産ですから、破産管財人が裁判所の
    許可を得て任意に売却をするか、競売という手続きを経て売却をするか、
    なんらかの手続きを経て、土地建物を手放すことになります。
     
    ただし、これはあくまでも土地建物がご自分の所有である場合で、
    配偶者や親族名義の土地建物に住んでいる場合には影響がありません。
    住宅を処分するには通常は数か月を要するので、即座に退去を迫られる
    ことにはなりません。その間に引っ越し先や引っ越し費用の準備を
    していくことになります。
     
     
    住み慣れた場所を離れるのは、生活に大きく変化を与えることになりますが、
    これも自分の生活スタイルや、お金の使い方などを計画的に立て直す
    のに必要なステップだととらえましょう。

  • 自己破産をした場合、未受領の養育費はどうなりますか

     

    Aさんは離婚後、相手方から養育費を受け取ることになっていましたが、養育費の支払いがされず、自分と子どもの生活費の不足分を借金で補ってきました。

    返済が難しい状況になったため、自己破産を検討しています。

    Aさんが自己破産をした場合、未受領の養育費はどうなるのでしょうか。

     

    Aさんに一定以上の財産がない場合

    破産手続開始決定時に一定以上の財産がない場合には、破産手続き開始決定と同時に破産手続きが廃止されます(同時廃止事件)。

    Aさんの未受領の養育費を含めた財産の総額が20万円を超えていない場合、Aさんは破産手続き開始決定時に有していた財産全額を手元に残すことができます。

    Aさんは未受領の養育費を相手方に請求することができます。

     

    Aさんに一定以上の財産がある場合

    自己破産手続き開始決定時点で一定の財産がある場合、破産手続き開始決定と同時に破産管財人が選任される管財事件となります。

    Aさんに破産手続き開始決定時点で未受領の養育費を含む一定の財産がある場合、原則として未受領の養育費は破産管財人の管理処分の対象になります。

     

    ① 相手方からの支払いが見込めない場合

    未受領分の養育費について、相手方からの支払いが見込めない場合には、なぜ支払いが見込めないのかを破産申立書類の中で明らかにする必要があります。

    この場合、未受領の養育費を除くAさんの財産が一定額を下回ることになると管財事件ではなく、同時廃止事件になります。

     

    支払いが見込めない理由が不明確な場合には、原則として破産管財人による調査が行われることになります。

    破産管財人の調査により、未受領の養育費の回収ができず、Aさんの財産が一定額を下回ることが明らかになった場合は、その時点で破産手続きが廃止されます。

     

    ② 相手方からの支払いが見込める場合

    破産手続開始時点において未受領の養育費は、原則として破産管財人の管理処分の対象になります。

     

    ただし、この場合でも、Aさんは、お子さんとの生活を送るうえで、その養育費が生活上欠かすことができないことを裁判所に申出て、裁判所に認めてもらうことにより、現金を含めて最大99万円までの財産を手元に残せる可能性があります。(自由財産の拡張といいます。)

     

    司法書士 永野昌秀

  • 自己破産をした場合、受け取っていた養育費はどうなりますか

     

    Aさんは離婚後、相手方から養育費を受け取ってきましたが、自分と子どもの生活費の不足分を借金で補ってきました。

    返済が難しい状況になったため、自己破産を検討しています。

    Aさんが自己破産をした場合、養育費をこれまで通り相手方から受け取れるのでしょうか。

     

    自己破産をしても養育費を受け取る権利はなくなりません。

    親が自己破産をしたとしても、自己破産手続き開始決定後に受け取る養育費に影響はありません。

    破産手続き開始決定後に新たに得た財産は、処分の対象にならないためです。(破産法第34条第1項)

    Aさんは自己破産手続き開始決定後、養育費をこれまで通り相手方から受け取ることができます。

     

    養育費を口座振込で受領している場合は注意が必要です。

    自己破産手続き開始決定時点で一定の財産がある場合、破産手続き開始決定と同時に破産管財人が選任される管財事件となります。

    養育費を銀行預金口座等への振込みで受領している場合、銀行口座に振り込まれた養育費は「預金」という扱いになります。

    Aさんが自己破産手続き開始決定時にすでに受け取っていた養育費が貯蓄されており、預金として20万円を超える場合、20万円を超える部分は「財産」とみなされ、原則として破産管財人の管理処分の対象になります。

     

    その場合でも、Aさんは、お子さんとの生活を送るうえで、その養育費が生活上欠かすことができないことを裁判所に申出て、裁判所に認めてもらうことにより、現金を含めて最大99万円までの財産を手元に残せる可能性があります。(自由財産の拡張といいます。)

     

    司法書士 永野昌秀

  • 離婚した相手が自己破産をしたら養育費はどうなりますか

     

    Aさんは離婚した相手から「自己破産するから養育費はもう支払えない」と言われました。

    Aさんも働いていますが、余裕はなく、突然支払えないと言われても困ってしまいます。

    Aさんの子の親権者はAさんです。

    親権者でない相手が自己破産をした場合には養育費の支払いを受けることはできなくなるのでしょうか。

     

    相手が自己破産したとしても養育費の支払い義務がなくなることはありません。

    親は、自分の子どもに対して、扶養義務を負っています(民法第877条第1項)。離婚によって親権を失ったとしても、相手が子どもの親であることに変わりはないため、法律上の扶養義務を継続して負うことになります。

    養育費は、自己破産をして免責許可が確定しても支払い義務が免除されない「非免責債権」にあたります。(破産法第253条第1項4号ハ)

     

    現実的に回収できるかどうかという問題は残ります。

    相手が自己破産をすれば、今まで返済に回していた分だけ生活費に余裕ができる可能性はあります。

    相手に収入があれば、破産手続き開始決定後に取得した財産は、相手が自由に処分できる財産となるため、相手との話し合いや、給与などが入ってくる銀行口座を差し押さえることによって、養育費を回収できる可能性はあります(養育費の場合は、最大で手取り額の2分の1までの差押えが認められます。)。

    しかし、相手方が経済的に困窮し、資力がほとんどない場合には、現実的に養育費の支払いを受けることは困難になるでしょう。

     

    こうした場合、離婚後に受給できる公的給付を利用することも可能です。

    詳しくはこちらです。

    厚生労働省、ひとり親家庭の支援について

    司法書士 永野昌秀

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