Aさんは、20年ほど同じ会社に勤務しています。事情があり自己破産せざるを得ない状態になったAさんは、「自己破産をおこなうと、退職金を貰う権利はどうなるのか?」と心配しています。自己破産と退職金はどのような関係なのでしょうか?
自己破産においては、退職金も財産とみなされます。ただし、退職金全額がもらえなくなるわけではありません。そもそも、現在勤務している人が退職金を貰うために退職することは、生活再建を目的とする自己破産とは相いれません。
そのため、自己破産手続きでは退職金については以下のように扱われます。
1 近々退職する見込み、もしくはすでに退職したが退職金を貰っていない場合
・退職金の4分の3は自分で保有することができます。残りの4分の1を返済に充て
ることとなります(ただし、返済に充てる額が20万円以下であれば、支払う必要が
ない場合もあります)。
2 現在退職する予定がなく、破産手続き後も勤務を続ける場合
・自己破産手続き開始時点での退職金見込み額の8分の7は自分で保有することがで
きます。残りの8分の1を返済に充てることとなります(ただし、返済に充てる額が
20万円以下であれば、支払う必要がない場合もあります)。
3 既に退職金を受領している場合
・この場合は、「退職金」ではなく「現金や預貯金」として取り扱われることとなりま
す。現金なら99万円を超える額、預貯金なら金額が20万円を超える額が返済に充
てる対象となります。
司法書士 廣川祐司