Aさんは、借金が400万円ほどあり自己破産を検討しています。
しかしAさんは、「職場に知られると職場に居にくくなるのではないか」を心配しています。自己破産をおこなうと職場に知られてしまうのでしょうか?
基本的には自己破産したことを職場に知られることはありません。なぜなら、自己破産手続きに携わる裁判所職員や司法書士、弁護士には厳しい守秘義務が課されており、たとえ家族であっても手続きについて伝えることはないからです。
しかし、以下のような場合に職場に知られてしまうことが考えられます。
1. 労働組合や共済組合など職場に関連した組織から借り入れをおこなっている
2. 会社から直接借り入れをおこなっている
自己破産手続きをおこなう際には、誰からどのくらい借金をしているのかを「債権者一覧表」にして裁判所に提出する必要があります。裁判所は、その一覧表を基にして各債権者に通知を発します。そのことにより間接的に職場に知られてしまう恐れがあります。
※職場に知られることを避けるためにそれらの借り入れを優先して返済すると、債権者平等の原則に反することから裁判所は「免責不許可」と判断して自己破産自体ができなくなる恐れがあります。
3. 退職金見込み額証明書を発行してもらう際に、発行理由を説明できない
自己破産手続きをおこなう際に、現在の職場に正社員として長期間勤務している場合「退職金見込み額証明書」の提出を求められる場合があります。会社の総務部などに発行を依頼する際に理由を尋ねられることがありますが、上手く答えられないと気付かれる恐れがあります。
4.官報を通して知られる
破産開始決定がなされると官報(政府が発行している広報誌)に氏名・住所等が掲載されます。職場の関係者がそれを見ることによって破産したことを知ることが考えられます。
しかし、官報を一般の人が見る機会はほとんどないため、極めて稀であるといえます。
上記のような理由で絶対に職場に知られないとはいえないですが、多くの場合職場に知られることはありません。
職場に知られる恐れがあることを理由に自己破産手続きをためらって放置していると、債務名義を債権者に取られている場合には裁判所から「債権差押命令」が勤務先に届いたり、債権者から勤務先に連絡が入ることによって本当に職場に知られてしまうこととなります。
自己破産すべきかどうかお悩みの方は、できるだけ早く専門家にご相談していただくことをお勧めします。
廣川 祐司