みなさん、こんにちは。司法書士の岡村です。
6月に入り、夏の気配を感じますね。
私の家の近くには、毎年紫陽花がたくさん咲く花壇があります。
5月末頃から、ピンクや青の花が少しずつ開いていく様を、毎日楽しみにしながら通勤しています。
さて、今日は「消滅時効」についてお話しします。
「消滅時効」とは、一定期間の経過により、権利が消滅することをいいます。
一口に消滅時効と言っても、対象の権利がどのような権利か、どのような原因で発生した権利か、によって規定が異なります。
今回は、個人がお金を借り入れた場合に適用される規定をご紹介します。
2020年4月、民法の改正により、消滅時効の規定が変更されました。
契約日が改正の前か後かによって、取り扱いが異なります。
まずは、現行(改正後)の民法の規定をみてみましょう。
【民法166条1項】
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
①権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
②権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
債権とは、ある特定の人に、ある特定の行為や給付を請求することのできる権利をいいます。
たとえば、金銭の支払いを請求する権利、物の引渡しを請求する権利などがあります。
貸金業者が債務者(お金を借りた人)に返済を請求する権利も債権です。
貸金業者は、いつから返済を請求できるか(返済期日)をわかっているはずですので、返済期日から5年で消滅時効が成立することになります。
この消滅時効の規定は、2020年4月1日以降の契約に適用されます。
他方、改正前の民法では、次のように規定されていました。
【改正前民法167条1項】
債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
2020年3月31日以前の契約には、この改正前民法の規定が適用されます。
とすると、改正前の借金は、10年経過しないと時効にならないように思えますが、必ずしもそうではありません。
商法という別の法律に、次のような規定がありました(民法改正に伴い削除されました)。
【改正前商法522条】
商行為によって生じた債権は、(中略)5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
消費者金融や銀行等の会社の事業は、商行為にあたります(会社法5条)。
よって、これらの会社からの借金は、改正前商法の規定に基づき、5年で時効となります。
なお、信用金庫や住宅金融支援機構等からの借金は、商行為にはあたらず、時効期間は10年です。
信用金庫等からの借金については、改正により時効期間が短くなったことになります。
消滅時効の期間が経過すると、債務者としては「もう支払しなくていい」と安心してしまうかもしれませんが、時効期間が経過しただけで自動的に権利が消滅するわけではありません。
前回記事「取得時効が成立する要件とは?」でもご説明したとおり、時効の効力を発生させるには「時効の援用」が必要になります。
「時効の援用」については、また次回の私のブログでお話しします。
司法書士 岡村浅黄