Aさんは自営業者で自宅兼店舗を改装した際に銀行から2000万円の融資を受けました。その後運転資金などの不足を補おうとして、貸金業者からの借金も500万円ほどになり、支払いのめども立たないため、自己破産を検討しています。
Aさんは自営業ですので、国民年金に加入していますが、老後資金の足しにしようと、10年前から個人型の確定拠出年金(以下「イデコ」といいます。)を始めました。
Aさんが自己破産をした場合には、イデコはどうなるのでしょうか。
Aさんはイデコを60歳以降に受取ることができます。
イデコとは、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度の1つです。国民年金などの公的年金と異なり、加入は任意となります。
60歳以降に、イデコの規約の定めにより、一時金または年金などの形でお金を受け取ることができます。
Aさんの自己破産手続きは管財事件となります。
Aさんは自営業者であり、自宅兼店舗という財産があるため、自己破産開始決定と同時に破産管財人が選任され、Aさんの自宅兼店舗などの価値のある財産は破産管財人により管理処分されることになります。
破産手続開始決定時の破産者の財産のうち、破産者は一定の財産を自由に処分することができ、これを自由財産といいます。破産者の経済生活の継続と経済的再生のために認められています。
自由財産の中でも、99万円以下の現金、差押えが禁止されている動産(家財道具など)や債権(給料など)は当然に自由財産となり(破産法第34条第3項)、破産管財人の管理処分の対象外になります。
イデコの財産は税金の滞納処分以外では差し押さえができない差押禁止財産とされており(確定拠出年金法第32条)、当然に自由財産となるため、自己破産しても守られます。
司法書士 永野昌秀