Dさんは2年程前から現在のアパートに住んでいます。
アパートの所有者である大家さん(賃貸人)が自己破産し、破産管財人が選任されました。
Dさんはこのまま現在のアパートで暮らせるのでしょうか。
また、入居の際に支払った敷金はどうなるのでしょうか。
破産管財人が選任されると、破産者の財産の管理・処分は破産管財人が行うことになります。
賃貸人が破産した場合でも、賃借人(今回はDさん)は継続してアパートに住み続けることができます。
1.アパートが売却された場合
破産手続開始後、破産管財人は不動産の買主を探して売却する手続きを行います。(任意売却といいます。)購入希望者が現れた場合には、銀行などの担保権者の同意を得たうえで、裁判所の許可を得て、不動産を売却することになります。
この場合には、通常、破産管財人は賃貸借契約をそのまま買主(新賃貸人)に引継ぎ、敷金についても新賃貸人に引き継ぐことになります。
Dさんは引続きアパートに住むことができますし、敷金についても新賃貸人に返還請求ができるようになります。
2.アパートが競売された場合
破産管財人による1の任意売却ができず、銀行などの担保権者により不動産が強制競売にかけられ、競落された場合
①銀行などの担保設定前からDさんがアパートに居住していた場合
Dさんは新所有者(新賃貸人)に対抗することができるため、引き続きアパートに住むことができますし、敷金についても新賃貸人に請求することができます。
②銀行などの担保設定後にDさんがアパートに入居した場合
新賃貸人がアパートの明渡しを求めた場合、Dさんは6か月の明渡し猶予期間はあるものの、アパートを退去しなければなりません。明渡しをしない場合には、強制的に明渡しをさせられることもあります。
この場合、敷金について、Dさんは今回破産した大家さんに請求することになり、破産手続の中で配当される額を受取れるにとどまります。
なお、1の任意売却の方が2の競売よりも、時間をかけず、高い価格で不動産を処分できる可能性が高いため、任意売却される方が一般的です。
司法書士 永野昌秀